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メディアと広告


一般とはちょっと違う視点でライブドアの話しを介しつつメディアと広告
の今後について書きましょう。

しかし、ライブドアの話しはすごく尾を引いていますね。
名実ともに今、日本でもっとも有名な会社になったことでしょう。

今回の件は、僕ら広告業界にとってもきわめて大きい経済ニュース
になります。

フジテレビ(CX)もニッポン放送(LF)も、僕らの会社や、他の会社の媒体扱いで
テレビ・ラジオとも一番大きな仕入れ先になります。
もし今回のTOBがライブドアとして成功裡にCXの経営権を抑えたならば、すごい
ことになると思います。
それぞれ利益ベースでも莫大な利益を出していますが、それ以上に
各局が持つコンテンツの2次利用の著作権を持ち、インターネットはもちろん、
アナログの物販や海外への番組販売等、おいしい既得権が目白押し。
社員年収で見ても、両局とも平均1200万ほどあるのです。
単体の正社員ベースで見ると、1600人ほどの社員がおり、万が一給料が
半額になると、600万×1600人≒100億も益出しできます。
ライブドアの給料から見れば十分あるラインでしょう。株主から見てもウェルカム
でしょう。たしかライブドアは450万程度の平均年収ですから。

さらに、放送局というところはタクシー経費がすごいです。
上場した以降は厳しくなったという話しですが、それにしても年間うん十億は
掛かっているのではないか。それも基本禁止とかになるだろう。
飲食経費も凄まじいわけですから、それもおそらく無駄なものだけ排除すれば
うん十億の削減は間違いありません。この時点で200億くらいは削減でき
そうです。現在の利益の半額くらいの額を追加できることになります。

放送局に人気があるのは、タレントと仕事ができて面白そうという単純なポイント
に加え、圧倒的な給料が理由に挙げられますが、こういう縛りをつけると大量に
辞める人が出るかと思います。それでも働きたい人はいっぱいいるでしょうし、どう
考えてもほとんどの番組の企画も構成もアウトソーシングしているわけですから、
社員数が減っても十二分に成り立ちそうです。余剰人員が死ぬほど多いです。
そうなればさらに経費削減になります。削減できる箇所が死ぬほどあるわけです。

もともと、放送局というところは上場する必要がなく、ほとんどの会社が未上場
企業でした。
放送局はその利益のほとんどを広告収入に頼っており、実際その広告枠を販売
しているのは広告会社。テレビスポットと番組提供費という2つの広告費を平均すると
ざっくり代理店は15%程度の取り分になり、残りの85%を局が持っていっているわけです。
ものすごい高利益体質です。既得権です。
局の言い分は「良いコンテンツがあるから、広告会社が成り立つ」というのです。
逆に僕らは、「我々ががんばって売っているから、番組を作れる」といいます。
この真逆の言い分はほとんど意味がなく、どうがんばっても既得権たる局が強い。
だから利益が出せる。

もともと放送局はそういう体質ですから、上場する必要がなかったのです。
ですが、デジタル放送時代になり、管轄の郵政省からのお達しで設備投資を
せざるを得なくなった。結果、莫大なお金が必要となり未上場であった企業が
上場をすることを選んだのであります。
その結果、上場したCXに今回の寝耳に水と言った事件が起きたのです。

M&Aコンサルティングの村上さんとは、私も3回ほど10名ほどの規模で会食を
したことがありますが、物凄い近づきがたいオーラのある方です。話しをすると
普通の良い方ですが、オーラ感が凄い。
そして、どう考えても商売が上手い。
一番初めに話題になった、東京スタイルのTOB、そしてサイバーエジェントなどなど
腐るほどか金が余っていて使い道に窮していた企業に仕掛け、利鞘を稼ぎ売り抜け
ました。

つまり上場するということは、持ち合いが当たりまえだった時代以降、物凄い
リスクのあることなんです。
現に、ライブドアでなくても今回の件をよりスムーズに行えた企業は5万とある
わけです。村上さんとライブドアが組んでいたとしても、いなくても、より良い条件
を突きつければ村上氏は人からお金を預かっているだけに、どの企業とも組んだ
に決まってます。

そして、もしCXが今回の件を「親和性が無い」という観点だけで逃げまくったら
大問題になるんでしょうね。上場企業だけに、株主代表訴訟とか十分あり得ると
思います。上場企業の役員になるってリスクありますね。
その昔、ある一部上場のゲームメーカーを担当していた時、そこの部長さんが
役員になるとき断ったということがありました。経営が悪化していて訴訟が
怖かったからです。結局その方は、いやいやながら正規の取締役になられました。
プライベートカンパニーからパブリックカンパニーになるのは、成長するのには必要
かもしれまえんが、リスクも高いのです。
どんな企業でも、必ず悪事を働く人間がいるわけで、パブリックになって問題が露呈
すると、管理者責任として経営陣にリスクがくる。欧米型の社会になることがほぼ
今回の一件で決まったといって良いでしょう。

本日付で、博報堂・大広・読売広告社の3社がぶら下がるアンブレラたる持ち株会社
博報堂DYホールディングズが東証1部に上場し、上位3社が東証1部に揃いました。
我々の業界も既に上場していた旧旭通信社を除けば、東証1部1発上場できる会社が5
年程前には多数ありました。景気の波の影響を1発で受ける不安定な業界のため、
ITバブル崩壊後は皆負け組み化しておりました。
持ち物が無いと良く言われる業界ですが、実はかなり在庫があり、その在庫が経営
を相当圧迫しているのです。
テレビ局、新聞社、出版社、ラジオ局など主に媒体社から広告枠を買いきらされる
のです。人気の枠を取るために、広告会社がリスクをとってその枠を広告主に売る
前に買ってしまうのです。媒体社はその時点でリスクゼロ。通常は広告主が買うと
言ってから仕入れをするため、それこそ仲介業でリスクはないのです。人気枠を
取る場合や、局が困った場合にそのような商法をしかけてくる。結果我々は断れ
ないという負のスパイラルになるのです。
広告会社は売れ残ったり、正規の料金で売れなければ叩き売りをし、真赤っか。
また、人気の枠を買う際の条件として抱き合わせ販売をさせられたりだとかするから
これは大変です。売れない枠を局から一緒に売られてしまう。DEEPな話です。
そういったものが多数あり、結果どの会社も最終的にただ同然で広告主に売っている
ことが多く、多額の赤字を持たされます。これこそまさしく既得権益。
さらに、番組の提供をしている広告主に対して、1クールごとに値上げの交渉がくる。
広告主は、「だったら下りる」と言うことが多く、それに対し広告会社は「据え置きで
良いので継続を!」とお願いする。でも裏では、仕入額が上がっており、自社の利益
を自ら削って枠に穴を空けないようにする。だから我々はかなり在庫が多いのです。

ハードディスクプレーヤーの値段がさらに下がり、テレビに必ず一台セットされる時代
が来ようものなら「スキップ」と言われるCM飛ばしが横行。今と同じビジネスモデルは
通用しなくなります。媒体の販売が利益の半分以上を締めるこの業界は今後、最大手
の企業と言えども、経営判断を間違えれば間違いなく倒産する時代が来ることでしょう。
さらに総じて、給与の高い業界ですから社員の給与も上がる要因は少なくなり、
優秀な社員から辞めていくことになる。放送業界よりも、明らかに社員の質が問われる
業界だけにそうなったらヤバイです。

その対策は各社とも考えてますが、僕からすると成り立つかどうか疑問です。
その一つが、ハードディスクプレイヤーの番組欄でCMを強制的に見せる動画配信
だったり、日テレで深夜に実験的に放送していたプロダクトプレースメントという手法です。
その名の通り、「物を置く」。番組内容とスポンサーの商品を意図的に絡ませる技法です。

旧来は、PR会社と呼ばれる業者が放送局から安価な予算で外注された番組制作会社
に対し、お金を出し、制作費補助の見返りとして商品を露出させてきましたが、
今度は局と広告会社がタッグを組んでやり始めました。ドラマーシャルと呼ばれる、ドラマ
とコマーシャルを合わせた番組なども実験的に始まりました。今後お金をこのような手法で
取っていけるとは思えません。
苦肉の策という感覚がどうも僕にはするのです。時代の変化への対応も未知の世界へ
突入し始め、一かばちかの世界になっています。

こういう時代でこそ、革命が起こるはずであり素晴らしいアイデアを考えて先行者メリット
を享受できればどんな企業にもチャンスがあるんでしょう。

凄く長くなりました。今日は仕事で徹夜なので待ち時間が長く暇だったのです。
暇つぶしでつまらないネタ書きました。

企業買収の専門家では無いので、難しいことはこちらを参考に!
まさしくリーマンブラザースの投資銀行部門でM&Aをされていた方がコメントしてます。
トラックバックまで僕にしてくれてありがとう。愛してます。
M&Aの鬼ブログ
by osaki_kotaro | 2005-02-17 01:05 | ビジネス
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